AI時代に必須のリスキリング:専門家が教える「必要性」と「いま何を学ぶべきか」

激動するビジネス環境の中で、新たなキャリアを築きたいと考える20〜50代のビジネスパーソンに向けて、いま注目を集める「リスキリング」や「リカレント教育」の必要性と今何を学ぶべきかをご紹介します。AI時代を迎え、終身雇用の終焉が進む今、私たちはどのような知識やスキルを身につけるべきなのでしょうか。

今回は、企業の人材育成支援から個人のキャリア開発まで幅広く手がけるワークアカデミーの柴橋さんに、これからの時代に必要な学び直しのポイントについてお話を伺いました。

▼リスキリングの重要性と学ぶべき内容
リスキリングが必要な理由
  • 3年前後での転職が若手世代のスタンダードに
  • 終身雇用の終焉により、自身の市場価値を高める必要性
  • 企業が「学ぶ社員」を重視する傾向
  • 海外と比べ日本は意識が低く、早急な対応が必要
今学ぶべき内容
  • AIを味方につける力
  • ビジネスの本質を見抜く力(マーケティング、戦略立案のスキル)
  • デジタルスキル(データ分析の基礎から最新のマーケティング手法)
  • 現場で即戦力となる実践的な技術やノウハウ
リスキリングのプロ
株式会社ワークアカデミー執行役員 柴橋 静華さん
柴橋 静華(しばはし しずか)さん

株式会社ワークアカデミー執行役員。キャリアアドバイザーとして1,500人以上のカウンセリング経験を持ち、人事・広報・講演・研修講師として活躍。企業の人材育成支援から個人のキャリア開発まで幅広く手がける。女性活躍推進UMECOプロジェクトマネージャーを兼任し、ロールモデルトークイベントを主催。大阪商工会議所主催「大阪サクヤヒメ 活躍賞」を受賞。

現代社会における「リスキリング」の必要性

人生100年時代により、私たちの働き方は大きな転換期を迎えています。かつては「一度就職したら定年まで」が当たり前でしたが、今や数年での転職が新たなスタンダードとなりつつあります。そんな中、自身の市場価値を高め、新たなキャリアを切り開くために注目されているのが、リスキリングとリカレント教育です。

前提知識:知っておきたい「リスキリング」と「リカレント教育」の違い

「リスキリング」と「リカレント教育」の違い

「リスキリング」と「リカレント教育」。似て非なるこの2つの学びの形は、実はそれぞれ異なる役割を担っています

リスキリングは、より実践的なスキルの「バージョンアップ」を目指します。ビジネススクールや専門スクールで、現場で即戦力となる技術やノウハウを習得するのが特徴です。データ分析の基礎から最新のマーケティング手法まで、ビジネスの最前線で求められるスキルを効率的に身につけることができます

一方、リカレント教育は、大学という"知の殿堂"で新たな専門性を築く学び直しを指します。たとえば、経営学を学んだビジネスパーソンが、AIの最新理論を学ぶために工学を学ぶ。あるいは、長年の実務経験を理論的な知識で裏付けるために改めて大学院で学ぶといった選択です。

必要な理由1:「3年前後での転職」がスタンダードの時代到来

現在、20代、30代の若手の間では、3年程度での転職が新たなスタンダードになりつつあります。これは決してネガティブな現象ではありません。むしろ転職は、自分の市場価値を高めるための戦略的な選択として捉えるべきでしょう。

つい10年前まで、「22歳で入社し、60歳で定年」という黄金のレールは日本人の「普通の人生」の象徴でした。しかし今、私たちは大きな時代の転換点に立っています。60歳以降も第一線で活躍する人々が増え、「定年後」という概念すら揺らぎ始めているのです。

実際、働き方の選択肢は驚くほど広がっています。リモートワークが一般化し、国境を越えた働き方も珍しくなくなりました。もはや「会社の椅子に座って、決められた仕事をこなす」時代は終わりを告げようとしているのです。

必要な理由2:「学ぶ社員」を重用する企業が増加

近年は、企業の側でも「学び」に対する理解が深まっています。勤務時間中の学習を奨励したり、社員の自己啓発を積極的に支援したりする企業が増加。「学ぶ社員」は、もはや会社にとっても貴重な財産として重用される傾向にあるのです。

欧米では既に、「同じ会社に長く勤める」ことよりも「どれだけのスキルを持っているか」が重視される文化が定着しています。その一方で、日本は驚くほどリスキリングやリカレント教育への意識が低く、海外の動向と大きな開きがあります。

これからの時代に必要なのは、会社という枠の中でも絶えず新しい挑戦を続け、自分の専門性と可能性を広げていく姿勢です。終身雇用という「安全網」が消えゆく今、私たち一人一人が自分のキャリアを主体的にデザインしていく必要があるのです。

専門家が教える「リスキリング・リカレント教育で今何を学ぶべきか」

かつては「大学卒業=学びの終わり」という固定観念が強かった日本社会。しかし今、大学自体が"生涯の学びのパートナー"として進化を遂げ、キャリアアップと知的好奇心の充足を同時にサポートする新しい教育の形が生まれています。

このような中で、今取り組むべき学びとは何か。年代やキャリアステージに応じた効果的な学習プランから、具体的な支援制度まで、プロならではの視点で紹介しましょう。

これからのAI時代に必要な“2つの学び"

AI時代に必要な“2つの学び

「AIの時代に、私たちは何を学ぶべきなのか」刻々と進化するデジタル社会において、その答えは意外にもシンプルです。現代のビジネスパーソンに求められる必須の学びは、大きく2つに集約されます。

1つ目は、「AIを味方につける力」です。ここで重要なのは、難しいプログラミングや複雑な技術を無理に習得する必要はないということです。基本的なPCスキルを土台に、AIに「具体的に何をしてほしいか」を的確に指示できる力が重要なのです。例えば、文章作成や画像編集をAIに依頼する際、目的や条件を明確に指示できる力が求められています。

2つ目は、「ビジネスの本質を見抜く力」です。マーケティングや戦略立案のスキルは、むしろAI時代だからこそ、その価値が高まっています。なぜなら、AIはあくまでもツール。そのツールを正しい方向に導くためには、確かな戦略眼と的確な判断力が不可欠だからです。

「新しい技術なんて、苦手...」そんな不安を感じる方も多いはず。でも、思い出してください。かつて私たちは、ガラケーからスマートフォンへの大きな変化も、見事に乗り越えてきました。

まずは身近なところから始めてみましょう。好きなアーティストのコンサート情報を探すためにAIを使ってみる。仕事の細かな作業をAIに任せて、家族との時間を少し増やしてみる。そんな小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな自信となって返ってくるはずです。

新しい技術を「怖いもの」から「頼れる味方」に変えていく—。その転換点に、私たち一人一人が立っているのです。

選ぶポイント1:年代やキャリアに合わせて「何を学ぶか」を選択

必要な「学び直し」は、年代やキャリアステージによっても様々です。人生100年時代の学びに、「遅すぎる」はありません。それぞれの人生の季節に合わせた、自分らしい学びのスタイルを見つけることが、これからの時代を生き抜くための重要なスキルとなります。

例えば、20代では対象的な2つの傾向があります。デジタルネイティブとして生まれ育った世代であるがゆえに、「もう十分知っている」という思い込みにより、学びから遠ざかってしまう層がいる一方で、「今の仕事を超えた次のステージ」を見据え、戦略的に学び続ける層も増えています。

30代、40代になると、より具体的なキャリアチェンジを視野に入れた学びが主流となります。例えば、「デザイナーになりたい」という夢。かつてはハードルが高いと思われていたこの転身も、今や決して遠い目標ではありません。実際、業務の傍らでデザインツールの使い方を学び、キャリアチェンジを果たす人も増えています。

選ぶポイント2:自分のペースで学べるリスキリングプログラムを選択

自分のペースで学べるプログラムを選ぶことこそが、継続的な「学び」に繋がります。現在は学びのバリアフリー化が進み、「学びたい」という意欲さえあれば、誰もが自分のペースで成長できる環境が整いつつあります。

例えば、育児中の女性向けには保育サービス付きのプログラム、オンラインと対面を組み合わせたハイブリッド型の講座など。学習期間も、ライフスタイルに合わせて柔軟に選べるようになっています。

ビジネススクールなら3ヶ月から半年程度の集中プログラムが主流。大学のリカレントプログラムでは、週末だけの短期コースから、じっくりと専門性を深める1年以上のコースまで、目的に応じて選択できるようになってきているのです。

YouTubeやSNSにも魅力的な情報が満載ですが、価値のあるもの・ないものが入り混じっていることは否めません。本当の成長を実現するためには、実績ある教育機関や、現場で活躍する専門家による体系的なプログラムを選ぶことが、より確実な道筋となるでしょう。

選ぶポイント3:「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を活用


経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の制度

「学び直し」を検討する人の多くが抱える悩みは、その費用です。そんな悩みの解決策が、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を活用したプログラムを利用すること。

現在就業中で将来的に転職を考えている方であれば、学習費用の50%相当、さらに学びを活かして転職された場合には、追加で20%の補助を受けることができます。まさに、意欲ある社会人の背中を力強く押してくれる仕組みといえるでしょう。

▼経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」

noa+リスキリング
https://reskilling.noaplus.jp/

低コスト&自分のペースでリスキリングを始める方法

「学び直し」をするにあたり、具体的にどのように始めればよいのでしょうか。

その一つの方法が、資格とキャリアのスクール「noa」の利用です。前述の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に対応したプログラムを利用することで費用を抑えることができます。他にも次のような特徴があります。

資格とキャリアのスクール「noa」の6つの特徴

noaを利用する最大のメリットは、一人ひとりの状況に合わせた学習環境が用意されている点です。次の2つのうち自分にあった受講スタイルを選び、必要な講座のみ受講することで、自分のペースでの学びが可能になります。

選べる受講スタイル
①実践的なスキルを確実に身につけられる対面授業
②仕事と両立しやすいオンライン対面講座

特に、オンライン受講は講師と双方向でやり取りができるリアル授業です。一般的には「完全独学型(eラーニング)」が多いため、不明点を解消しづらいデメリットがあります。しかしnoaでは、不明な点をすぐに確認できるだけでなく、講師が学習状況の確認まで行います。成長までサポートしてくれるので、一人で学習を進めるのが苦手な人でも諦めずに続けられそうですね。

リスキリングはまず始めることが大切です。何を学ぶか迷う場合は、まずはどのようなプログラムがあるのかをスクールのホームページでチェックしてみると良いでしょう。

名称 資格とキャリアのスクールnoa
公式ページ https://noa-wa.co.jp/
問い合わせ https://noa-wa.co.jp/contact/
スクール 大阪中津校、天王寺あべのハルカス校、西宮北口校、オンライン校
※詳細は公式ページでご確認ください

この記事のまとめ

リスキリングが必要な理由
  • 若手の3年前後での転職が一般化
  • 終身雇用の終焉で市場価値向上が必須
  • 企業が学習する社員を積極的に評価
  • 日本のリスキリング意識の遅れ
必要な学びの内容
  • AIへの適切な指示力
  • マーケティングと戦略立案力
  • データ分析とデジタルスキル
  • 実践的な即戦力スキル
効果的な学習方法
  • 年代別カスタマイズ学習
  • オンライン・対面併用の柔軟な受講
  • 経産省支援(費用50%補助)の活用
  • 実績ある専門機関での体系的学習
編集部:竹内 彩
●編集部 竹内彩

観光協会おすすめの「ドライブデート」企画や、「プロに聞くアドバイス」企画の編集を担当。地方移住に関する取材経験が150本と豊富で、各地の名所に精通。プライベートでも週2回はドライブするほどのドライブ好き。