「新しいことを学ぶのが好き」「知識を深めるのが楽しい」という男性は多いのではないでしょうか。そうした男の知的好奇心を満たす場所としておすすめの施設が、愛知県西尾市にある日本初の古書の博物館「西尾市岩瀬文庫」です。
西尾市岩瀬文庫は、江戸時代の書物を中心に、重要文化財を含む8万冊以上を保存・公開し、古書に関する展示やイベントも開催。今まで触れたことのなかった本と出会い、新しい知識を得られる、まさに“学びの宝庫”となっています。
この記事では、西尾市岩瀬文庫の学芸員、青木さんに伺った話をもとに文庫の魅力と知的好奇心旺盛な男性におすすめできる理由について紹介していきます。
この記事の目次
「古書を守り、未来へ伝える」を目指す古書の博物館西尾市岩瀬文庫
西尾市岩瀬文庫は、1908(明治41)年に地元の実業家である岩瀬弥助という人物が、本を通じた社会貢献を志して設立した私立図書館を起源としています。戦後に西尾市の施設となり、平成15年に日本初の古書の博物館としてリニューアル。古書を守り未来へ伝えることを指針に運営され、多くの人に親しまれています。
「学問のすゝめ」など貴重な古書が読める、本好き男性至福の体験ができる
西尾市岩瀬文庫に所蔵される書物は、古典籍と呼ばれる江戸時代以前に出版されたものを中心に、明治時代以降のものも含まれています。
蔵書の中で最も古いものになると、なんと奈良時代の770年に印刷されたお経があります。そのほかにも、江戸時代に筆写された「枕草子」や、明治時代に出版された福沢諭吉の「学問のすゝめ」など、誰でも一度は聞いたことのあるような有名な書物のホンモノも多数所蔵しています。
西尾市岩瀬文庫の最大の特徴は、それら貴重な書物をケース越しに眺めるのではなく、すべての書物を実際に手に取って読める点です。本好きの男性にとっては、たまらない体験ではないでしょうか。
閲覧室は落ち着いた雰囲気で、じっくりと書物を楽しむことができます。カウンターで読みたい本を申請すると、スタッフが書庫から本を持って来てくれます。入館はもちろん、閲覧も無料なので気軽に訪れることができる点もありがたいですよ。
昔の人が親しんでいた本に現代の私たちが触れる体験は、書物を通じて当時の人々とつながるよう。壮大なロマンを感じますよね。
大河ドラマ「光る君へ」の放送で、「枕草子」の写本を読みに訪れる人が急増
▲落ち着いた雰囲気の館内。日常生活では触れることのできない貴重な古書にじっくりと触れ合える
西尾市岩瀬文庫の来館者は、一人で訪れる方や夫婦、歴史好きのグループとさまざまです。
例えば歴史好きのグループは、江戸時代に書かれた織田信長や徳川家康が登場する合戦記や、城の絵図を仲間と一緒に眺め、楽しんでいるようです。また、2024年にはNHK大河ドラマ「光る君へ」が放送されたことで、「枕草子」を読みに来る人が急増しているとのこと。「枕草子」の写本に触れれば、ドラマもさらに楽しめそうです。
その他にも江戸時代のレシピ本や、歌舞伎や文学、ファッションなど、様々な分野の書物があるので、きっと自分の琴線に触れるものが見つかるはず。古典籍に囲まれたひとときは、知見が広がるような体験にもなりそうですね。知的好奇心が旺盛な男性にとって、刺激的な場所であることは間違いないでしょう。
くずし字が苦手でも楽しめる、絵が主役の古典籍も豊富にラインアップ
▲江戸時代版カラー博物図鑑といえる本草図説。色彩豊かな絵が美しく、くずし字が苦手でも楽しめる
「古典籍はくずし字(※1)で書かれたものが多いイメージで読みにくそう…」という方におすすめなのが「本草(※2)図説」。高木春山という江戸時代後期の本草家が作成した全195巻にも及ぶ、日本史上最大級の「江戸時代版カラー博物図鑑」です。
(※1)くずし字:主に江戸時代に以前に使われていたくねくねと曲がった文字
(※2)本草学(ほんぞうがく):古代中国の薬草学に端を発する学問で、のちに他の自然産物へも対象が広がり、形態や性質などを研究する博物学へと発展したもの
動植物や鉱物、さらには自然現象に至るまで、当時の自然科学が扱うすべての分野を網羅。精緻な写生画が描かれ、その名称や解説が添えられています。綺麗な色彩で描かれた絵は、パッと見た瞬間に美しいと感じるほどで、文字を読めなくても楽しめます。
その他にも、アニメや漫画を思わせるような奇妙かつユーモア溢れる妖怪たちが楽しげに行進する「百鬼夜行之図」、江戸やその近郊の名所を紹介する江戸時代版旅行ガイド「江戸名所図会」なども絵が豊富なので、くずし字が苦手な方にもオススメです。
展示やイベントも多数開催。古書からSDGsを学ぶ企画は男性が生活を省みる機会に
▲西尾市岩瀬文庫の最大級のイベント「にしお本まつり」。本好きの男性ならぜひ訪れてみたい、本をテーマにしたお祭り
西尾市岩瀬文庫は、日本の書物文化の変遷が追える常設展を設けているほか、古書にまつわる企画展示、くずし字を読み解く初心者向けの古文書講座など、イベントも豊富に開催しています。
これまでに開催した企画展示は90回にのぼり、およそ四半期ごとにテーマを変えて岩瀬文庫の書物を紹介しています。昨今よく耳にするSDGsや、大河ドラマの影響で脚光を浴びている平安文学など、トレンドにあわせた企画も多くなっています。企画展示に合わせて、思わず定期的に訪れたくなりますね。
2024年8月24日〜11月17日開催の企画展「をかしくあはれな平安文学〜『源氏物語』とその周辺〜」では、岩瀬文庫の蔵書を通して「源氏物語」の魅力とその作者・紫式部の人物像に迫るとともに、「枕草子」や「伊勢物語」など同時代の有名な文学作品を紹介しています。
「源氏物語」は紫式部が執筆した、日本を代表する古典文学です。岩瀬文庫所蔵の『源氏物語』は、第1帖「桐壷」から第54帖「夢浮橋」までの54冊に、一条兼良による注釈書と登場人物の関係図の2冊を加えた56冊に及びます。金襴緞子の豪華な装丁に、優美な文字で綴った上品な一品です。
清少納言による日本最初の随筆文学、「枕草子」は岩瀬文庫で今いちばん“アツい”書物です。岩瀬文庫の『枕草紙』は江戸時代に公家の柳原紀光が筆写し、柳原家の秘蔵としたもので、系統の確かさや写し間違いの少なさで高い評価を得ています。大河ドラマ紀行にも登場し、注目を集めています。
この展示には上記で紹介したほかにも大河ドラマファン必見の古典文学作品が揃い踏みです。企画展終了後は、展示した蔵書の実物を閲覧室で手にとってご覧いただくことができます。企画展で興味をひかれた蔵書をご自身の手でめくることができるのは、ほかにはない体験です。
また、毎年10月の最後の週末に行う「にしお本まつり」は市民ボランティアとともに地域も巻き込んだ西尾市岩瀬文庫の最大級のイベントです。西尾市岩瀬文庫と西尾市立図書館を会場に、古本市や本に関する講演会、傷んだ本の修理実演など本をテーマにした様々な催しが開かれる、まさに読書の秋にふさわしいお祭りです。
各地から本好きが集う機会でもあるので、本好きの男性なら足を運んでみたいですね。
▲国登録有形文化財の旧書庫。西尾市岩瀬文庫のシンボルとなっている
蔵書修繕などのボランティアに登録し「古書を未来へ伝える」一員に
西尾市岩瀬文庫では、資料の保存や教育・普及活動に取り組むボランティアを募集しています。ボランティアには2024年8月時点で約60人が登録しています。活動内容は、和本のとじ糸の取り替えや、各種体験講座の受付・アシスタント、にしお本まつりの催しの企画・実行などです。西尾市岩瀬文庫を訪れ、古書に興味が芽生えた方や、古書を未来へ伝えるという理念や取り組みに共感した方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。登録については、西尾市岩瀬文庫(0563-56-2459)にお問い合わせください。
西尾市岩瀬文庫の口コミ・評判
知る人ぞ知る古書図書館で三河の至宝。重要文化財を含む古典籍が保存・公開されており、海外からの評価も高いのだとか。近くに来られた方は是非訪れて頂きたい施設です。
大河ドラマ「光る君へ」でも紹介された清少納言「枕草子」の写本に直接触れて読むことができます。他の施設では叶わない体験に感銘を受けました。
ここでしか見られない史料がたくさんあります。係の方の対応もとても良く、スムーズに閲覧できました。駐車場、入館料も無料で大変助かります。
古書の多さと、それらを実際に手に取ることができる体験の希少さが高い評価を受けていました。多くの西尾市民にとって誇らしく、愛されている施設のようで、企画展示のテーマが変わるごとに訪れる地元リピーターもたくさんいらっしゃいました。
西尾市岩瀬文庫の基本情報
所在地 | 愛知県西尾市亀沢町480 |
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問い合わせ先 | TEL:0563-56-2459 フォーム:https://iwasebunko.jp/contact/ |
開館時間 | 午前9時〜午後5時 (閲覧室は午後4時、申請は3時半まで) |
休館日 | 月曜日(月曜日が祝日の場合は開館) 館内整理日(7月から9月を除く毎月第3木曜日) 年末年始 特別整理期間 ※今年度は9月19日(木)〜9月26日(木) |
入館料 | 無料 |
公式ページ | https://iwasebunko.jp/ |
設立年 | 1908年(明治41年) |
設立者 | 岩瀬弥助 |
所蔵資料数 | 8万冊以上 |
最古の所蔵品 | 770年に印刷されたお経 |
ボランティア登録人数 | 約60人(2024年8月時点) |
主要イベント | にしお本まつり(毎年10月の最後の週末) |