歴史的なものが好きで、博物館めぐりが趣味という大人の男性に、島根県松江市にある「モニュメント・ミュージアム 来待(きまち)ストーン」をご紹介します。
宍道湖をのぞむ、自然豊かな松江市の来待地区にある「モニュメント・ミュージアム 来待ストーン」は、採石場跡に開かれたユニークな博物館です。
この地域でのみ採掘される凝灰質砂岩「来待石(きまちいし)」についての展示が豊富にあるほか、特徴的な石材を活かした彫刻体験・陶芸体験ができるので、出雲地方の歴史やこだわりの工芸品を愛でたい方も、彼女と訪れて体験を楽しみたい方も、両方満足できるはず。
施設の入口には、なんと岩盤を貫いて作られた「石のトンネル」が待っています。ここを通って、非日常の雰囲気を味わう、ひとときの冒険に出かけませんか。
この記事の目次
無骨な工芸品が好きな方にうってつけ。「モニュメント・ミュージアム 来待ストーン」
▲駐車場と博物館を、来待石の岩盤を貫いた「石のトンネル」がつなぐ。非日常空間の始まりにワクワクが高まる
モニュメント・ミュージアム 来待ストーンは、かつての石切場跡(採石場跡)に開かれた、全国でも極めて珍しい博物館です。松江市宍道町来待地区周辺でしか産出しない来待石を「学べる」「体験できる」博物館として1996(平成8)年にオープンしました。
まずは、そんな施設の概要と歴史についてご紹介していきます!
「来待石」の魅力を楽しめる3つの施設
モニュメント・ミュージアム 来待ストーンは、来待石の歴史・文化・地質が展示された「ミュージアム(博物館)」、来待石への彫刻体験ができる「来待石工房」、来待石の石粉からできた釉薬を使用した陶芸体験ができる「陶芸館」の、3施設から構成されています。
男性お一人でも、デートスポットとしても、ファミリーでも楽しめる要素がいっぱいなので、そんな各施設の詳細をお伝えします。
「ミュージアム」には、採石の様子から古墳の石室や化石まで、多彩な展示あり
▲灯ろうの火袋加工の工程を再現した腕のレプリカは、開館当時に現役だった石工さんの腕を、石膏で取って再現したもの
ミュージアムでは、来待石の成り立ちや製品加工の歴史などに関する資料を紹介。石の匠たちのオブジェや、機械が普及する前、手掘りをするために使われていた道具も展示されています。
現代の便利な電動ツール類ももちろんスタイリッシュなのですが、プリミティブに「石を削る」目的のために使用された品々の造形美にも心打たれるはず。工具好きの男性は必見です。
それらの様子を再現したシアターやVTR映像もあり、臨場感もたっぷり。見学をしている方々から「あんな風に採石していたんだ、すごい」など、感嘆の声が聞こえてきます。
▲出雲地方で古墳時代後期に作られた「石棺式石室」のレプリカ。大きさから、地域の有力者のものと考えられている
来待石を用いて作られたものの中には、古墳時代の石室(遺体を収めるための石の部屋)や石棺(遺体を収めるための棺)もあります。
石棺式石室のレプリカで特徴的なのは、閉塞石(へいそくせき)と呼ばれる扉石。石室の入口をふさぐ閉塞石に、閂(かんぬき)を表現したといわれる「H」の文字に似た陽刻(浮彫)の装飾が施されています。屋根の形を模した家形の天井石も特徴的です。
▲高さ約2m90cmの五輪塔の実物大パネル。五輪塔は、仏教の宇宙観である「空・風」「火」「水」「地」を表す4つの石を重ねたもの
「五輪塔(ごりんとう)」と呼ばれる、室町時代後期~戦国時代頃のお墓の実物大パネルも展示されています。来待石で作られたものの中では、最大級といわれるものです。
採石場で石を切り出している時には、化石が出てくることもあります。
ミュージアムでは「大森ー来待層」のものを中心に、さまざまな化石も展示。1,300万年前に絶滅した哺乳動物・パレオパラドキシアの下顎の化石は、とても貴重なものです。
情報が盛りだくさんで、見ごたえ十分のミュージアム。空間自体はコンパクトなのでサラリと見れば30分ほどで回れますが、考古学・歴史好きの男性の好奇心を、しっかりと満たしてくれそうです。
来待石の彫刻ができる「来待石工房」。石を彫る「ものづくり」の喜びを味わって!
モニュメント・ミュージアム 来待ストーンの「来待石工房」では、加工がしやすいという来待石の特性を活かした、彫刻体験を行っています。
予約は不要で、石のプレートにお好みの文字などを彫り、当日持ち帰りが可能。全国でも珍しい石の彫刻体験は、来館の良い記念になるでしょう。
▲彫刻体験では、職人さんが使っているものと同じ道具を使用。本格的な気分が味わえる
また、来待石を使ったペンダントや時計を作ることもできます。幅広い世代で楽しく取り組めるので、それぞれのオリジナル作品を作るのも良いかもしれません。
▲来待石の板石にアクリル絵の具でお好みの柄をつけ、オリジナルの時計を製作。針・クォーツ付きで、その日から使用できる
「陶芸館」でオリジナルの器などを製作。自分用にも、パパからのお土産にもぜひ
▲「来待釉薬(きまちゆうやく)」をはじめ、さまざまな釉薬から好みのものを選べる
来待石の石粉が釉薬となることから、モニュメント・ミュージアム 来待ストーンの「陶芸館」では陶芸体験も行われています。
作れるものは、茶わんや皿、花器など。男性の方の中には、ビアマグを作られる方もいらっしゃるそうです。陶器製のビアマグは泡がクリーミーになるといわれています。まして自分で作ったオリジナルマグとなれば、毎日の晩酌がいっそう楽しくなりそうですね。
▲陶芸が初めての方でも、分かりやすい説明があるので大丈夫
また、素焼きの陶器(湯呑みまたは4寸皿)に絵を描く「絵付け体験」も行っているので、お好みで選ぶこともできます。彼女と一緒に楽しんだり、かわいいキャラクターのデザインに挑戦して、お土産として持ち帰ってもよいでしょう。
そのほか、地元の陶芸作家さんが製作した陶器も販売されています。
迫力ある出雲狛犬や、伝統的工芸品の出雲石灯ろうが男性に人気
▲たれ耳で、尾がピンと立っているのが出雲狛犬の特徴。座っているスタイルは「居獅子(いじし)」と呼ばれる
モニュメント・ミュージアム 来待ストーンで見ることのできる、来待石を用いた数々の石像は、考古学・歴史好きの男性にも人気です。
特に、屋外に展示されている「出雲狛犬(いずもこまいぬ)」、別名「出雲唐獅子(いずもからしし)」は、迫力があり見応え抜群です。
江戸時代から作られていたといわれ、口を開けた「阿形(あぎょう)」と口を閉じた「吽形(うんぎょう)」で一対になっています。
▲身構えたスタイルは「勇獅子(いさみじし)」と呼ばれる。出雲狛犬は“映える”撮影スポットとしても人気
来待石から作られた出雲石灯ろう(いずもいしとうろう)も、見どころのひとつです。
庭園やお寺などに置かれる出雲石灯ろうは、古い時代から現在まで作られ続け、全国で広く親しまれています。美術品としても高く評価されており、海外からの需要も多く、1976(昭和51)年には経済産業省の「伝統的工芸品」にも認定されました。
モニュメント・ミュージアム 来待ストーンの来待石工房周辺にたくさん置かれているので、灯ろうや庭園が好きな方は、一つひとつを眺めながらゆったりと歩いてみてはいかがでしょうか。
▲出雲石灯ろうは、苔がつきやすく庭園の雰囲気によく似合うことから、美術品としても愛されている
来待地区は見どころ満載。ミュージアムの後は周辺の観光を!
この施設の近隣は、歴史や考古学、工芸品好きの男性はもちろん、カップルでも楽しめるエリアなんです。「モニュメント・ミュージアム 来待ストーン」の主役である「来待石」の歴史や、周辺の見どころなどを紹介していきます。
この土地でのみ産出される来待石。近隣にも見どころあり
▲駐車場に設置されたモニュメント。大石(約65トン)と小石(約30トン)で「人」の字を表している
来待石は、「大森ー来待層(松江市の宍道湖南岸に位置する来待地区周辺に分布する地層)」で採れる、約1,400万年前の火山灰や砂が堆積して形成された「凝灰質砂岩(ぎょうかいしつさがん)」です。
「大森ー来待層」では、サメの歯や貝類、樹木などの植物、また1,300万年前に絶滅した哺乳動物・パレオパラドキシアの化石も発見されています。地質学・古生物学的にも貴重な場所といえるでしょう。
来待石は石質が均質で柔らかく、加工に適するという特徴をもちます。そのため、島根県では古くから石造物や生活用具、建材などに使用されてきました。
江戸時代には、松江藩の特産品として許可なく他藩へ持ち出すことが禁じられ「御止石(おとめいし)」とも呼ばれていました。この頃には出雲地方全域に来待石製品が広がり、中でも、政治の中心地・松江には城下町づくりのために大量の来待石が出荷されたそうです。
そして現在も、来待石は彫像・石碑などのモニュメントや建材などに、幅広く用いられています。ミュージアム近隣を歩けば、さまざまな工芸品が点在しているほか、普段は見過ごしがちな「石」そのものに対する見方が変わるかもしれません。
「趣味人」として知識を深めていきたい男性に、ピッタリではないでしょうか。
▲ミュージアム含め、宍道町内には来待石製のタヌキが60匹もいる。博物館見学の後には、まちを散策しながら探してみては
▲湖岸で波を防いだり、足場にするため置かれる円柱形の波止石である「如泥石(じょでいいし)」にも来待石が用いられる
また石そのものだけでなく、来待石の粉も、古くから釉薬(陶器の表面を覆うガラスの層)の原材料として活用されてきました。
出雲地方の隣にある、石見(いわみ)地方では良質の粘土が取れ「石州瓦(せきしゅうがわら)」と呼ばれる屋根瓦や「石見焼」と呼ばれる陶器が生産されています。
この石州瓦の釉薬に使われるのが来待石粉。約1,300度という高温で焼成することにより独特の赤茶色に発色するので、石見地方の町並みには、赤茶色の屋根の家々が並んでいます。
▲石州瓦。石見産の粘土と来待釉薬を使い、1,300度の高温で焼成することで、絶妙な赤茶色が表れる
また「来待石の石切場跡」は、「島根半島・宍道湖中海ジオパーク(※)」の「ジオサイト(見どころ)」の1つにもなっています。その他、松江市・出雲市には魅力的なジオサイトが50ヶ所あるので、あわせて楽しんでみてはいかがでしょうか。
(※)ジオパーク…貴重な地質・地形と地域の生物多様性や歴史文化を守り、持続可能な開発を進めるエリア
以上のように、モニュメント・ミュージアム 来待ストーン周辺はファミリーで訪れるのにも良いエリアなので、「この週末にどこで過ごそうかな」と考えているお父さん方はぜひ参考にしてください。
▲採石場跡地「三才谷(みさいだに)の大岩」
モニュメント・ミュージアム 来待ストーンを訪れた人の感想
ここでは、実際にモニュメント・ミュージアム 来待ストーンを訪れた方の口コミを調査しました。
石好きにはたまらない、知る人ぞ知る博物館。ダイナミックな石のトンネルはワクワク感が素晴らしいし、展示も充実していてずっと眺めていたくなる。
雰囲気のある非日常的な空間で、日々の生活を離れてリフレッシュできる
来待石の歴史に触れることができる貴重な場所。石灯ろうも風情があり「自宅の庭にあったら素敵だな」などと、楽しく想像した。
ちょうどイベント開催中で石のクイズなどもあり、大いに盛り上がりました。彫刻体験にも参加して、夏のいい思い出になりました。
全国でもここでしか見られない、貴重な来待石に囲まれ、非日常的な体験ができるという声が多く見つかりました。
夏季と冬季には企画展も催されています。夏の企画展では展示やクイズなどが行われているので、カップルで訪れて楽しんだという感想も多数。いつものデートとは一味違う体験をしたい男女におすすめです。また、冬の企画展は石をテーマとした地域の歴史・民俗に関する展示となっています。
モニュメント・ミュージアム 来待ストーンの基本情報
所在地 | 島根県松江市宍道町東来待1574-1(ミュージアム) |
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お問い合わせ先 | 0852-66-9050 |
営業時間 | ミュージアム:9:00~17:00(最終入館16:30) 来待石工房・陶芸館:9:00~12:00、13:00~17:00(各体験ごとに最終受付時間あり) |
休館日 | 毎週火曜日(火曜日が祝日の場合は翌平日)、年末年始 |
利用料金 | ミュージアム入館料:一般 390円、中学生・小学生 190円 彫刻体験料:一般 2,030円、小・中学生 1,340円 時計作り体験料:1,800円 ペンダント作り体験料:500円 陶芸体験料:一般 2,700円、小・中学生 2,010円 絵付体験料:1,240円 彫刻体験料・ミュージアム入館料セット料金:一般 2,300円、小・中学生 1,480円 陶芸体験料・ミュージアム入館料セット料金:一般 2,960円、小・中学生 2,160円 |
公式サイト | https://www.kimachistone.com/ |
※最新の情報は公式サイト等でご確認をお願いいたします