近年、自然の風景とアートが融合する観光地が増えています。豊かな山や海に囲まれて、ゆっくりと過ごせる観光地や旅行先を探している方は多いのではないでしょうか。特にアートやカメラが好きな男性は、訪れた先々で独特の魅力ある写真を撮影したいと考えているでしょう。
そこで今回ご紹介するのが、熊本県葦北郡津奈木町にある「つなぎ美術館」です。館内では作家の作品やオリジナルの企画展を鑑賞できるほか、美術館周辺でもさまざまな彫刻や現代アートの世界に触れることができます。
自然の中に点在するアートは撮影自由です。思わずシャッターを押したくなるような魅力的な撮影スポットがたくさんあり、一眼レフカメラを持った写真愛好家が男女問わず多く訪れています。男性の来館者も非常に多いそうです。
今回は、津奈木町役場で政策企画課の主事を務める濱田真大さんに、美術館や周辺エリアの魅力についてお話を伺いました。
この記事の目次
「つなぎ美術館」を中心に、町全体で楽しむアート散策
▲青空とのコントラストが美しい彫刻作品(「風ん子」岩野勇三)
編集部
まずはじめに、つなぎ美術館さんの特徴をお教えください。
濱田さん
つなぎ美術館は、津奈木町で約40年前にはじまった「緑と彫刻のある町づくり」の理念を引き継ぎ、水俣芦北地域の芸術文化の発信拠点として2001年4月に開館した美術館です。
現在、津奈木町の橋の上や温泉施設などには、全部で16体のさまざまな屋外彫刻が置かれています。つなぎ美術館の館内では、収蔵している作品を展示するほか、毎年独自のアートプロジェクトや企画展を開催しています。これらのプロジェクトや展示会では、地域の芸術家や新進気鋭のアーティストの作品を紹介しています。
自然の中を歩きながら鑑賞できる屋外作品の中には、大型の現代アート作品があったり、道に描かれている絵もあったりします。さらに、森の中の生木に彫られている仏像もあるんですよ。年々、様々なジャンルの作品と、関わりのある作家さんも増え、内容はどんどん充実しています。町全体が美術館のような雰囲気になっているのが特徴です。
作品の背景を探る楽しみ:男性の知的好奇心を刺激
▲自然と融合する彫刻の作品が鑑賞できる(「爽風」岩野勇三)
編集部
つなぎ美術館を訪れた方々は、屋外でどのようにアート作品を楽しんでいらっしゃるのでしょうか。
濱田さん
自然の中に設置された作品も多く、来館者の方々はそれぞれ好みの画角を探したり、作品の情報を調べながら鑑賞しています。
屋外作品の魅力は、四季折々で見え方が変化することです。作品だけでなく、周囲の風景も含めた空間全体がアート作品となっているものも多くあります。これが津奈木町の屋外作品の特徴だと考えています。
濱田さん
作品の多くには詳細な説明文を添えていません。しかし、作品や作家について自ら調べ、その背景を紐解いて楽しむ方もいらっしゃいます。
アート作品の魅力は、見る人それぞれで異なる解釈や感じ方ができることです。そのため、作品を観た人の率直な感覚を大切にしてもらいたいと思っています。
絶景を楽しむ5分間:岩山へ向かうモノレールの旅
▲急こう配を走るモノレール。空調が効いた車内で快適な5分の旅が楽しめる
編集部
つなぎ美術館さんを訪れる方が、楽しみにされているものは、ほかにもございますか。
濱田さん
美術館から直結で、舞鶴城公園展望所に行けるモノレールがあります。美術館の後方にある舞鶴城公園展望所へは、歩いても行けますが、モノレールに乗って急こう配の景色を楽しみながら移動するのもおすすめです。往復だけでなく、片道のみの利用も可能です。
編集部
モノレールの特徴がございましたらお教えください。
濱田さん
徒歩で20~30分かかる展望台までの道のりを、わずか5分で結んでいます。2022年3月から新車両が導入され、現代美術家の柳幸典さんが車体のラッピングデザインを監修しています。
舞鶴城公園展望所では彫刻の展示を鑑賞できるほか、高台から町並みと不知火海の絶景を楽しむこともできます。
廃校プールが変身:宿泊型アート体験「入魂の宿」
▲廃校となった小学校のプールをリノベーションしてつくられたアート作品「入魂の宿」(撮影:川畑和貴)
編集部
つなぎ美術館の周辺にある、屋外で楽しめるアート作品について教えてください。彫刻や道に描かれた絵以外にもあるのでしょうか。
濱田さん
はい、あります。津奈木町役場の庁舎横には、石を活用した作品「石霊の森」があります。また、美術館や庁舎から少し離れた場所に、旧赤崎小学校の施設をリノベーションした「入魂の宿」という作品もあります。
編集部
「入魂の宿」はどのようなアート作品なのでしょうか。
濱田さん
「入魂の宿」は、日本で唯一、海の上に建つ旧赤崎小学校を活用した作品です。2010年3月に閉校した後、活用策を検討してきました。校舎は使用できませんでしたが、現代美術家の柳幸典さんがプールをアート作品として再生させました。
通常は無人で鑑賞できる施設です。入館には前日までの事前予約か、美術館での当日受付が必要です。予約・受付時にパスワードを受け取り、そのパスワードを入口のドアに入力して入館します。
また、春、夏、秋、冬の各シーズンで期間限定の宿泊客も募集しています。
編集部
アート作品に宿泊できるのは、とても特徴的で人気がありそうですね。
濱田さん
そうですね。宿泊施設そのものがアート作品なので、特別な体験ができると思います。
2023年10月のオープン後、冬場は寒いため利用が少ないかと予想していましたが、1月・2月の毎週末はほぼ宿泊予約で埋まっていました。非常に嬉しく思っています。
編集部
宿泊について詳しく教えていただけますか。
濱田さん
施設には2部屋あり、1日1組限定で1部屋または2部屋を予約できます。1部屋あたり2名まで宿泊可能で、1泊の最大利用人数は4名です。1部屋のみの予約でも、空いている部屋に別のお客様が宿泊することはありません。
編集部
1部屋だけの予約でも他のお客様と一緒にならないので、アート作品の中でゆっくりと過ごせそうですね。
カメラ愛好家必見:夕日と星空の絶景ロケーション
編集部
「入魂の宿」には、どのような方が宿泊されているのでしょうか。
濱田さん
この作品は、水俣病を描いた作家・石牟礼道子さんの「入魂」という詩から着想を得たものです。そのため、水俣病や社会問題に関心のある方や、それらを大学で研究している方の宿泊が多くあります。
また、旧赤崎小学校の「海の上にある」というユニークな立地に興味を持って来られる方も多いです。施設の目の前には、潮の満ち引きで渡れたり渡れなくなったりする島があります。さらに、夕日が目の前の水平線に沈む素晴らしい瞬間も楽しめます。
特に、カメラマンの方が夕日や星空の撮影を目的に訪れています。プロだけでなく、趣味で一眼レフカメラを楽しむ男女の方も多く宿泊されます。熊本には、津奈木町の屋外作品を題材にレッスンをしている写真教室の先生もいらっしゃいます。
編集部
展示されている作品を鑑賞するだけではなく、作品と景色を一緒に撮影できる楽しみが、付加価値にもなっているのですね。
■入魂の宿:
https://www.tsunagi-art.jp/nyukon/
アートな旅をさらに充実:周辺のグルメ・温泉・お土産情報
▲町内を散策していると、様々なアート作品に出会える(「ひまわり」佐藤忠良)
編集部
つなぎ美術館を訪れた際に、合わせて行けるようなスポットがございましたらご紹介ください。
濱田さん
津奈木町の「あん・さんく」というケーキ屋さんでは、美術館に関係のある作家さんとコラボしたお菓子をつくっています。
作家さんとコラボした焼き菓子は、つなぎ百貨堂という物産館でも販売していますが、「あん・さんく」店舗では他にも美味しいお菓子を提供しているので、アート散策の途中に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
グルメでいうと、食事と温泉が楽しめる「つなぎ温泉四季彩」もおすすめです。モノレールに乗って、岩山の中腹につくられた展望露天風呂に行けるんですよ。
このモノレールの車両には、画家の武内明子さんが手掛けた可愛いラッピングデザインが施されています。
自然に囲まれた温泉でくつろぎ、地元の料理を味わうことで、アート散策や映えスポットの撮影で疲れた体をゆったり癒すことができます。
編集部
露天風呂とつながるモノレールのラッピングを含め、町の中の様々なアートに、多くの作家さんが関わっているのですね。
つなぎ美術館を訪れると、温泉やグルメなどたくさんの楽しみがあると分かりました。アートやカメラが趣味の方に、特におすすめしたい場所です。
濱田さん、本日はたくさんお話を聞かせていただきありがとうございました。
■お菓子の国 あん・さんく:
https://uncinq15.com/
■つなぎ温泉四季彩:
https://www.town.tsunagi.lg.jp/shikisai/
つなぎ美術館の基本情報
所在地 | 熊本県葦北郡津奈木町岩城494 |
---|---|
アクセス | ・肥薩おれんじ鉄道・津奈木駅から徒歩10分 ・南九州西回り自動車道・津奈木インターチェンジから車で3分 ・JR九州新幹線・新水俣駅から車で10分 |
開館時間 | 10:00~17:00 |
休館日 | 毎週水曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始 |
公式ページ | https://www.tsunagi-art.jp/ |
※最新の情報は公式ホームページ等でご確認をお願いいたします。